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ASNARO Spacecraft

読んだ

System outline of small standard bus and ASNARO spacecraft
Toshiaki Ogawa, Keita Miyazaki, Osamu Itoh
23rd Annual AIAA/USU Conference on Small Satellite

「論文1本ノック」というタグを一瞬付けようと思って踏みとどまった危ない。国産の小型衛星用標準バスの話。

  • 450kgで0.5m分解能のRemote Sensing衛星を標準バス搭載一号機として2011年に打ち上げ
  • ルーターを中心としてSpaceWireプロトコルでOn Board Computerや姿勢制御機器などを接続
  • 計算機も共通化したものをバス、ミッション、姿勢制御で1台ずつ使用

衛星バスシステムの一部/全部を標準化したいという考えは衛星技術者の中でずーっと前からある。そりゃ衛星には電源やら通信やら少なからず同じようなコンポーネントが内包されているもので、それをいちいち最初から設計するのはあほらしい。だけど衛星なんてそう沢山作るものでも無い(無かった)ので、頑張って標準化したのにそのコストを回収する前に半導体が生産停止しちゃったーとか、ロンチャーやミッションの要求に応じてどうしても大小の個別改修が必須になるとかいう悲しい現実が待っている。標準化すればコストが減らせて幸せだぜというのはあくまで理想です理想。
それでも世の中の流れ的には標準化が着実に浸透しつつあり、衛星全部は無理だけど通信だけなら陳腐化し難いし柔軟に運用できるよねーということで、通信プロトコル標準化としてのSpaceWireがESA/JAXAで本格的に採り入れられ始めた。海外ベンチャーでも日本の常識では信じがたいようなペースで衛星を作りまくっている所があったりして、もはや標準化を制することができない者はこの先生きのこれないよねーという状態。

そんな危機感の中なのかよく分からないけど、国産で小型で標準バスでなかなかの性能のリモートセンシングという方向に振り向けたのがASNARO。450kgで0.5mResolutionというのは凄いと言えば凄い。無駄に分解能を上げてもダウンリンク効率を圧迫する(狭域・高解像度なら飛行機でやれという話にもなる)ので、民生用途としてはこれ位の能力があれば十分すぎる印象。技術的な諸問題は既に殆ど残っていなさそうなので、後はいかにこれをシリーズ化して沢山作れるかというところに懸ってきそう。当面は宇宙研の小型衛星シリーズとかに生かされるんでしょうけども、世界と戦えるようなバスシステムに成長すればしめたもんです。

ただ国産の標準バスとなると、どうしてもH-2A/Bに搭載できるだけの厳しい安全基準をクリアしている必要があるので、そこがコスト面でネックにならないかが少し不安かもしれない。具体的にロシアのロンチャーと比較したわけではなくて実感と伝聞からくる印象論でしかないので、ちゃんとしたことは言えないけど。ちょっとこれを思い出したりもする。

たとえば自分の原稿は、あらゆるものをフリーソフトで作っている。原稿の改訂はリアルタイムだし、PDF もHTML もその場で作って公開できる。たしかに原稿のできあがりは「雑」だけれど、読むに耐えないほどひどいわけではないし、出版社の人に原稿を託したなら、もちろん「プロの仕事」が施されて、比較にならないぐらいに高品質なものが作られるのは分かるんだけれど、その「品質」に、はたして何百万円ものお金をかける意味というのは、どれぐらいあるものなんだろう。
(中略)
恐らくは企業とか、あるいは国家にも、「品質で名前とブランドを形成する時代」のあと、どこかで「雑」と「多様」とにシフトをするタイミングというものがあって、そのタイミングを間違えて、「より高品質」に行ってしまうと、袋小路に入ってしまうんだろうなと思う。

「雑な物づくり」に未来がある - レジデント初期研修用資料

人工衛星の世界でもたぶんこういう選択を迫られているんだろうなという印象。標準バスにしても、安全審査ドリブンな今までと同じような開発の手続きを踏んでいたらいくら優秀なバスでもぜーんぜん意味が無くなってしまうので、大胆な「儀式」のショートカットが必要になるはず。

小型→超小型

このバスシステムのやり方は数百kg級衛星としてはしごく真っ当なアプローチに見える。じゃあこれをそのまんまスケールダウンして超小型にするとどうなんの、何がだめなのということを考えるけどつかれてきたので別途。