簡単なICで90%効率のリチウムイオン充電器を構成する
リチウムイオン電池は爆発物.爆発物を安全に充電するために,ふつう充電電圧と電流をコントロールできる専用のICを使う.充電方式は以下のように分類される:
- CCCV充電方式
- スイッチング充電方式
- ダイオード整流式
- 同期整流式
- リニア充電方式
- スイッチング充電方式
- パルス充電方式
「回路に入れる電力のうち何%が電池に蓄えられるか」を充電効率と呼ぶ.当然充電効率が高いほうが嬉しいけど,効率の良い方式ほど回路構成が複雑になってしまう.上記のうち一番効率を稼げる方式は同期整流式のスイッチングチャージャで,軽く90%を超える充電効率を実現できる.下はごく一般的な同期整流式充電回路の例.
部品点数が多いだけでなく,スイッチングFETを4個外付けするので,基板のレイアウトをかなりちゃんと考慮しないと動かない.ユニバーサル基板で…なんて論外,2層感光基板でも安定して動かすのは難しい.
しかも上のICに限らず,往々にしてパッケージが素人に半田付けできないようなもの*1だったりする.そんなこんなで充電IC自体はMAXIM,Texas Instruments,Liniar Technology,MITSUMIあたりからいくらでも出ているけど,
- 素人に取り扱えて
- けっこうな(90%以上の)効率を出せる
モノは全然無い.
LTC4002
Liniar TechnologyのLTC4002はダイオード整流式の充電IC.半田付けが容易な8ピンSOICパッケージで,かつ最大85%の充電効率を達成できる.データシート記載の回路図を見ても,同期整流式に比べてかなり簡単.
データシートより引用.外付けのスイッチFETは1個しか無い
これで満足してもいいけど,せっかくなのでもっと高効率を達成したい.ということでこのICで3A充電をしたときの損失項を簡単に手計算すると,こんな感じになる*2.
つまり,スイッチ部分ではなく入力部の整流ダイオードで大部分の損失が発生している計算.
理想ダイオードに置き換える
こういう時に便利なのが理想ダイオードと呼ばれるIC.FETと組み合わせることで,ダイオードより圧倒的に小さい電力損失で整流効果を得られる.さすがに高速スイッチングには使えないが,今回バカでかい損失を生んでいるダイオードはただの整流用なので置き換えが容易.今回はLTC4412を用い,こんな回路となった.
スイッチFETが2個に増えたが,ゲートがそれぞれ別のICに接続されているのでレイアウトの制約は少ない.実際に2層基板を使い,90%超の効率で安定して充電できる回路が構成できた.ちなみにちょっとググったところ中国系のサイトでもLTC4002を使った超小型の91%,8A充電回路らしきものが紹介されているが,さすがにこの基板サイズで8Aを充電するのは相当危ない気が…